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※赤字の日はお休みさせていただきます。
先日の記事『スキンバリア(4):命の育み「羊水と胎脂」』で、胎児は羊水の中でしっかりとした皮脂膜(胎脂)に護られて成長することを述べました。
今回は、これまで無菌状態で育つと考えられていました胎児が、近年、出産時に既にアトピー等肌トラブルを発症した例が散見されることを知り、胎盤の菌状態について調べてみました事をお伝えします。
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「Science Translational Medicine」誌に掲載された米国の研究によると、健康な妊婦の胎盤にも多様な細菌からなる小さなコミュニティーが存在します。
胎盤に存在する細菌の大部分は人体に普通に存在する善玉菌で、胎盤の細菌の有無が早産のリスクに関与している可能性もあると述べています。
「Science Translational Medicine」誌より、本研究の要点は以下のとおりです。(出典:http://kenkounews.rotala-wallichii.com/placenta-bacteria/)
<人体常在菌>
人体の皮膚や、腸、口の中などには、数兆匹もの細菌が住みつきコロニー(細菌が分泌するバイオフィルムで守られている集落。歯垢もその1つ)を形成しています。
人体に住んでいる細菌、中でも腸に住む細菌(腸内細菌)の多くは、ヒトの健康に深く関与しています。「Human Microbiome Project」によると、健康な成人には1万種類超の細菌が住み着いています。
赤ちゃんが生まれるときに母親の細菌が赤ちゃんに移りますが、普通分娩で生まれた赤ちゃんと帝王切開で生まれた赤ちゃんとでは細菌の種類が異なることが知られています。
これまでの研究でも母親から赤ちゃんへの細菌の移動が体内で既に始まっている可能性は示唆されていましたが、それでも胎内は無菌であると考えられてきました。
生後の赤ちゃんの腸内に住む細菌は、分娩時に赤ちゃんが母親の産道を通ったときに赤ちゃんに移動するのだと従来考えられてきましたが、研究グループ の以前の研究によると、膣に住む最も一般的な細菌ですら、新生児の最初期の腸から見つかる細菌と合致していません。
そこで「赤ちゃんの腸内細菌はどこからやってくるのか」という疑問が生じたのです。
今回の研究では、細菌のDNAを調べる技術を用いて320の胎盤サンプルを分析し、胎盤に存在する細菌の種類と量を調べました。
胎盤に住む細菌の数は人体の他の場所に比べて少なく、住んでいる細菌もヒトの腸に普通に見られる E. coli などでしたが、驚いたことに胎盤の細菌叢([さいきんそう] 細菌の集まり)に最も良く似ているのは口腔の細菌叢でした。
このことから、母親の体において、口の中に住む細菌が血流中に入り込み、それが胎盤にまでたどり着くのではないかと思われます。
研究者によると、胎盤に住む細菌は種類によって様々に異なる作用があるようです。
例えば、栄養分の代謝(栄養を胎児が吸収できるような形に変えているということでしょうか)を行う細菌や、イースト菌(胎児にとって有害?)や寄生虫に対する毒性がある細菌、早産の抑制などです。
早産だった妊婦から採取された89の胎盤では、有益だと思われる細菌のうち数種類が顕著に少なくなっていました。
(株)構造機能科学研究所
鈴木 正夫