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チョコレートの科学 (2)

2016.02.20


前回のチョコレートの科学(1)では、チョコレートのおいしさの秘密はカカオ脂(カカオバターとも称されています)の結晶構造にあることを述べました。カカオ脂にはⅠ~Ⅵまでの6つの結晶系があり、Ⅴ型結晶(融点33.8℃)は手に持っても融けないが、舌の上に載ったときにとろりと融けて、特有の食感(テクスチャー)を醸します。

一定の物質から複数の結晶を発現する現象を多形現象と呼んでおり、カカオ脂は多彩な多形現象を発現する代表的な例です。

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【チョコレートの美味しさの秘密「美味しさを演出するカカオ脂の化学構造」】

カカオ脂を含む食用油脂や体脂肪は、水酸基を三つ有するグリセロール(慣用名はグリセリン)に脂肪酸が三つエステル結合したトリアシルグリセロールから成っています。
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食用油脂は三大栄養素の一つでありますが、種類によって脂肪酸の種類や比率が異なり、脂肪酸の生理作用の違いによって健康との関係が論じられています。

では、カカオ脂がなぜ多彩な多形現象を発現するのでしょうか?その秘密は、カカオ脂特有の化学構造にあります。

カカオ脂の化学構造の特徴は、脂肪酸の種類がオレイン酸(34%)、ステアリン酸(35%)、パルミチン酸(26%)の3種類で約95%占めており、グリセロールの水酸基の1と3の位置に飽和脂肪酸のステアリン酸とパルミチン酸、2の位置にはシス型二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸「オレイン酸」が配置された分子構造を形成しています。

このように、カカオ脂は特有の脂肪酸組成と分子構造を有する結果として、多彩な多形現象を発現するのです。

一般の食用油脂では脂肪酸の種類が多く、グリセロールとの結合位置がランダムであるために多形現象を発現しません。

グリセロールの特定の位置に特定の脂肪酸が配置されている油脂(脂質)を構造脂質と称しており、カカオ脂は構造脂質の代表例です。

(株)構造機能科学研究所
 鈴木 正夫

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