構造機能科学研究所 ~お肌の健康と美容に「RIMシリーズ」~

トップ > ブログ

カレンダー

2024年03月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最新記事

カテゴリ

アーカイブ

         
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
           

※赤字の日はお休みさせていただきます。

スキンケアとは

ブログ

脂肪酸の医科学 「トランス脂肪酸」

2016.05.19


日本人の食生活の欧米化に相俟って、食品に含まれるトランス脂肪酸の健康に対する影響がクローズアップされています。
脂肪酸の医科学は私の専門でもありますので、私見も交えて、脂肪酸の概要とトランス脂肪酸の健康に対する影響について解説いたします。

以前に配信した記事に加えた長文となりますが、ご関心の方はご覧ください。
…続きを読む…


1.脂肪酸とは
脂肪酸は、言葉通り、脂肪を構成する酸性の物質です。アミノ酸と並び、人体を構築している2大有機分子です。
人体では、細胞膜や皮脂膜、脂肪の構成成分として存在しています。

2.人体を構成する脂肪酸の構造と分類
脂肪酸の基本構造は、長鎖の炭化水素鎖(CH3(CH2)n)の末端にカルボキシル基(COOH)が付いています。
このカルボキシル基が酸性を示します。

3.人体を構成する脂肪酸の分類
脂肪酸を大別すると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和と不飽和の違いは、炭化水素鎖(CH3(CH2)n)に二重結合が存在する(不飽和脂肪酸)かしない(飽和脂肪酸)の違いです。

人体を構成している脂肪酸の種類
飽和脂肪酸:最も多いのがパルミチン酸です。次いでステアリリン酸です。
不飽和脂肪酸:二重結合数が1~6のものが存在しています。最も多いのがオレイン酸です。

4.二重結合の立体構造「シス(cis)とトランス(trans)」
二重結合の立体構造には、シス(cis)型とトランス(trans)型があります。
炭化水素鎖の基本構造は直鎖ですが、二重結合のところでくの字型に曲がる構造がシス型、曲がらないのがトランス型です。
人体等生物が合成している不飽和脂肪酸の二重結合は、シスのみです。
しかし、シス二重結合に微水添(部分的な水素添加)や精製工程、酸化などの化学的な作用が働くとトランス型に変化します。問題視されているトランス脂肪酸の発生です。

5.トランス脂肪酸を含む食品
一般に、不飽和脂肪酸の部分的な水素添加(微水添)によって融点等の物性を変えた加工油脂(マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなど)に多く存在しています。
存在量は、数%~十数%であり、マーガリンには8%程度含まれています。
従って、これらの加工油脂を使用している食品に含まれます。
また、牛や羊等の反芻動物は、食べ物に含まれる不飽和脂肪酸を第1胃において微生物による微水添を行っていますので、肉や乳の脂質にはトランス脂肪酸が2~5%含まれています。バターでは、約2%の含有量です。
また、フライ食品等油脂を多く含む食品は、酸化により過酸化脂質の生成と共にトランス脂肪酸も増加します

6.トランス脂肪酸の健康に対する影響
摂取量やその他の食べ物、生活習慣にもよりますので一概には言えませんが、これまでの知見を以下に記しておきます。

<多くの知見で共通していること>
心筋梗塞や狭心症等の心疾患に対するリスクの増加です。理由は明白ではありませんが、細胞膜における脂肪酸の凝集状態(パッキングモード)や運動性(モビリティ)に影響していることが考えられています。

<可能性が示唆されていること>
肥満を発症させやすい、脂質異常(コレステロール、中性脂肪)、高血圧、高血糖、アトピー等アレルギー疾患の増加、認知機能の低下、子宮内膜症や不妊症など婦人科系のトラブルの原因、母乳を通じて乳児へのトランス脂肪酸を移行、などが報告されています。

<摂取量の目安>
WHO(世界保健機関)も、トランス脂肪酸の摂取を抑えるべきだとして、1日当りの総エネルギー摂取量の1%未満とすることを勧告しています。
日本人の平均は約0.5%、米国では2.6%です。
1g当りのエネルギーは、
脂質:9Kcal、たんぱく質:4Kcal、糖質(炭水化物):4Kcal。

<各国の対応と規制>
一定量を摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2003年以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えています。

WHO/FAOの2003年のレポートで、トランス脂肪酸は心臓疾患のリスク増加との強い関連が報告され、また摂取量は全カロリーの1%未満にするよう勧告されています。

日本では、欧米と違い規制が行われていません。諸外国と比較して食生活におけるトランス脂肪酸の平均摂取量は少なく、相対的に健康への影響は少ないとの観点からです。

しかし、日本人の食生活が欧米化しており、規制の必要性が取り沙汰されています。
日本では、健康増進法に基づき表示の基準が定められている飽和脂肪酸やコレステロールと異なり、トランス脂肪酸については表示する際のルールがありませんでした。
そのため、消費者庁は2011年2月21日、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針を公表しました。

指針では、食品事業者に対してトランス脂肪酸に関する情報開示を行う際の考え方を明らかにし、「販売に供する食品の容器包装、ホームページや広告による情報開示を期待」するとしています。

トランス脂肪酸の含有量を表示する場合、名称は「トランス脂肪酸」とし、他の栄養成分と同様に表示することとしています。単位は100グラムもしくは100ミリリットル、または1食分、1包装その他1単位当たりの含有量を一定の値により記載し、単位はグラム(g)で表記します。

一方、食品100グラム当たりのトランス脂肪酸の含有量が0.3グラム未満の場合は「含まない(「無」「ゼロ」「ノン」「フリー」その他これに類する表示)」と表示しても差し支えないとしています。


(株)構造機能科学研究所
 鈴木 正夫

ツイートする

記事一覧へ

コメント一覧

タイトル
名前
コメント
画像認証(認証文字を入力してください)
CAPTCHA Image  [別の画像に替える]