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※赤字の日はお休みさせていただきます。
治療から予防へ(セルフメディケーション)15.超分子から生命科学・免疫へアプローチ
『分子はよく耳にする言葉だけれども「超分子」という言葉は聞いたことがない』という方も多いのではないでしょうか。
超分子という概念はジャン=マリー・レーン(Jean-Marie Lehn)らによって提唱され、その偉大な業績により1987年にノーベル化学賞を受賞しています。
2019年には、日本における旭日重光章受章も受賞しています。
著書に“supramolecular chemistry(超分子化学)”などがあります。
「超分子」とは「自己組織化能(環境に適応して構造と機能を自ら制御する)」を有する分子集合体のことです。
分子の単なる混合物は「物(もの)」でしかありませんが、分子の種類・量・秩序(集合状態)が整っている分子集合体は、生物様の機能「自己組織化能」を発現するようになります。
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構造機能科学研究所では、皮膚のバリアと生理作用の要「皮脂膜」の成分と機能に着目して、皮膚の洗浄・保護・保湿・代謝を「超分子科学」の観点から追究しています。
超分子の日本における草分けは、1986年に京都大学理学部生物物理学教室の宝谷紘一先生が総括責任者となって創設された国家プロジェクト「宝谷超分子柔構造プロジェクト」です。
宝谷先生は、超分子の柔構造に着目し、生命現象や人口細胞にアプローチを目指されました。
生命の基本単位である細胞は、脂肪酸系脂質(リン脂質)の膜で覆われており、脂肪酸系脂質の物性に注目しておられました。
私は脂肪酸系脂質の生理作用を追究する中で、脂肪酸系脂質の分子物性「立体配座(conformation)や動力学(dynamics)、集合状態(packing mode)とその多様性(polymorphism)、界面科学など」の追究が不可欠と考えて、分子科学を専門とする多くの先生方と研究を進めていました。
このようなことから、宝谷先生からお声がけをいただき、超分子に魅かれる発端になりました。
以来、生命科学の基礎として超分子科学を追究してきています。
自然界は超分子に満ちていると言っても過言ではありません。
典型的な例が私たちの体です。
私たちの体は水・たんぱく質・脂質等の分子の集合体ですが、混合物ではなく、生き物に成っています。
分子が集まって生命の基本単位である遺伝子や細胞が形成され、さらにそれらが集まって脳や心臓、肺、皮膚などの全く異なった機能を有する組織体になっています。
私たちの体を分子の種類と数、秩序構造の階層で観ると、
『個々の生体分子⇒「超分子」⇒ 細胞 ⇒ 組織・器官⇒ 人体』
になります。
このようなことから、生体用の製品開発には、生体組織との関係が重要です。
生命分子科学の観点からみた生体組織に対する混合物と超分子の作用の違いは次のようになります。
・混合物 ⇒ 乱したり、傷をつけたりする
・超分子 ⇒ 新陳代謝機能を有する
私はアレルギーの窓から免疫を追究してきていますが、免疫に基因するもう一つの厄介な病気が感染症です。
抗原となっている主体が、アレルギーは物質であり、感染症では微生物です。
アレルギーの「抗原抗体反応」は勿論のこと、感染症の理解と追究に超分子科学の観点からのアプローチが有意義と考えています。
現在、世界で蔓延している新型コロナウイルスなどのウイルスは、生物と物質の中間的な物体と捉えられていますが、私は「ウイルスは超分子である」と捉えています。
そうすると、ウイルスが環境によって変異が起こりやすいなど、ウイルスの特徴が理解できます。
この点については、次回に説明を添えたいと思います。
(株)構造機能科学研究所
代表取締役 鈴木 正夫