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※赤字の日はお休みさせていただきます。
治療から予防へ(セルフメディケーション)
11.抗原抗体反応と交差反応(交叉反応)
「新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した場合、無症状・軽症・中等症・重症など個人によってレベルが著しく異なっています。なぜですか?」
と『治療から予防へ』をご覧いただいている皆様からご質問をいただいています。
この質問は免疫医科学を追究している全世界の研究者に向けられたものであり、この質問に対する的確な回答は優良な治療薬開発の有力な手がかりになることと思います。
…続きを読む…
私はアレルギーの観点から免疫を追究してきておりますが、感染症については動物用ワクチンの経験しかありませんので的確な回答はできません。
ですので、回答の一助として、先ず免疫概論を述べ、その後に抗原抗体反応における交差反応(交叉反応)についてご紹介いたします。
【免疫概論】
免疫は、先天性の免疫「自然免疫」と後天性の免疫「獲得免疫」があります。
一般に免疫力と称しているのは「自然免疫+獲得免疫」のことです。免疫力は、15歳頃に最高になり、20歳過ぎると低下し始めると言われています。
免疫系の反応は多様ですが、抗原非特異的な反応と抗原特異的な反応に分けることができます。
抗原非特異的な反応は、貪食細胞(食細胞)と呼ばれる免疫細胞(マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、好中球など)が、抗原を探し出して食べて消化することによって排除します。
抗原特異的な反応の主な例が、抗原抗体反応です。
貪食細胞による抗原提示細胞⇒T細胞⇒B細胞の連係プレーによって抗原の構造の一部を認識し、その構造に適合した抗体を産生して保存されます。
再度その抗原が侵入してきたときには、保存された抗体が迅速に大量に産生されて抗原除去に対応します。
抗原が抗体と結合する部分をエピトープ、抗体が抗原と結合する部分をパラトープと称します。
抗原抗体反応の結合の様式は、エピトープを鍵、パラトープを鍵穴に見立てて表現されています。
【交差反応(cross-reaction)】
ある抗体が、その抗体の産生反応を引き起こした原因である抗原とは別の抗原に結合することを交差反応(交叉反応)と称しています。
抗原と抗体が一対一の関係ではなく、複数の関係になる理由は、抗原提示細胞による抗原提示は抗原をそのまま提示しているのではなく、抗原をばらばらな断片にして提示していることに起因しています。
それぞれの断片に対応した抗体が産生されますので、断片の構造を含む異種抗原にも抗原抗体反応が及ぶことになります。
交差反応で広く知られている例が、花粉と果物・野菜の関係です。
主な例を以下に示します。
ヒノキ科/スギ花粉:トマト
カバノキ科/シラカバ・ハンノキ花粉:リンゴ、モモ、サクランボ
イネ科/イネ花粉:トマト、スイカ、メロン、オレンジ
キク科/ヨモギ・ブタクサ花粉:メロン、スイカ、セロリ
新型コロナウイルスは、人類にとって未曾有のウイルスであることから精密に適合する抗体を持っている人はいないと思われますが、これまでの獲得免疫で体得した交差反応可能な抗体レベルの違いが、症状のレベルの違いを反映している可能性があるかもしれません。
(株)構造機能科学研究所
代表取締役 鈴木 正夫