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※赤字の日はお休みさせていただきます。
治療から予防へ(セルフメディケーション)
10.ワクチンと皮膚免疫
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に蔓延する中、中国に次いで早く報じられた日本人の発症率と死亡率が欧米諸国に較べて1~2桁少ないことが注目されています。
その理由の可能性の一つとして挙げられているのが、日本人のBCGワクチン接種率の高いことです。
結核予防のBCGワクチンが、新型コロナウイルスの予防や重症化に効果があるかどうかについては不明な中、3月末から国内での出荷量が急増しているとのことです。
…続きを読む…
予防接種法に基づき1歳未満の乳児に定期接種されているBCGワクチンが、乳幼児への供給に深刻な影響を及ぼす恐れがあると危惧されています。
現在、新型コロナウイルス用のワクチン開発が世界で急ピッチに進められていますが、これは1~2年先になるであろうといわれています。
免疫効果が高く副作用の少ないワクチンの開発が容易ではないことは、私も動物用ワクチンの開発研究をワクチントップメーカーの某社と共同で行った経験がありますので理解できます。
担当したのは有効なアジュバント (Adjuvant)の開発です。
アジュバントとは、主剤の免疫作用を増強する目的で併用される物質のことです。
主剤・アジュバント・その他の成分による製剤処方の違いにより、抗体産生能や体内動態、副作用が著しく異なることを経験しました。
そして、ワクチンの主な投与方法が「経皮接種」であることを知り、皮膚が免疫における重要な舞台であることを認識しました。
この経験を通して、アレルギーの始まりが「経皮感作」にあることを予見しました。
さらに、その後約10年に亘って行った医薬の経皮吸収の研究において「経皮感作」に対する予見は確信になり、アレルギーの予防と改善には「経皮感作」を予防する皮膚免疫に基づいたスキンケアが不可欠と思うようになりました。
今から30年前のことです。
当時の日本人のアレルギー罹患率は、まだ15%程度でしたが、その後の10年で約30%まで急増して大きな社会問題になってきました。
このような社会背景とバブル弾けて日本経済建て直しの一方策として大学発ベンチャーに期待する機運の高まりにあって、「アレルギーの予防と改善」を目指して構造機能科学研究所を1999年に設立しました。
構造機能科学研究所設立当時は、経皮感作に対して医学界は否定的でした。
そのような中にあって、京都大学医学部皮膚科の井階幸一助教授(当時)がご賛同くださり、構造機能科学研究所の設立メンバーに加わってくださいました。
その後わかったことですが、宮地良樹教授も経皮感作のお考えであることを知り意を強くしました。
その後、世界の多くの研究者によりアレルギーの始まりは主に経皮感作であることが実証されて、アレルギー医療のパラダイムシフトが進行しています。
宮地良樹教授の後任の椛島健治教授は、免疫における皮膚の重要性をさらに深化されておられます。
以下に椛島健治教授が、医学の歩み242巻10号において書かれた記事の一端をご紹介いたします。
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【皮膚の役割と構造,全身の鑑としての皮膚】
皮膚は,細菌・真菌・ウイルスなどの病原体や紫外線,化学・物理的刺激から生体を保護するバリア機能に加え,免疫作用,知覚作用,汗などの分泌作用,ビタミンD などの合成作用などのさまざまな役割を果たす。
皮膚の構造は表皮と真皮よりなり,表皮には,表皮角化細胞,Langerhans 細胞,メラノサイト,真皮には,真皮樹状細胞,T 細胞,肥満細胞,好酸球,好中球,血管,リンパ管,脂腺などの細胞が存在する。
Langerhans 細胞は1 平方ミリメートル当り約1,000 個と高密度に分布し,また,真皮には全末梢血中の約2 倍ともいわれるおよそ200億個のT 細胞が存在する。
したがって皮膚は人体最大の免疫臓器であり,また多彩な免疫応答を誘導することが可能である。
実は我々は,皮膚を介してさまざまな情報を得ている.医療においても同様であり,患者は蝶形紅斑ができたからといって膠原病内科を受診するのではなく,ほっぺが赤くなったからといって皮膚科に来院する。
すなわち皮膚は,膠原病,自己免疫疾患,移植片対宿主病(GVHD),ウイルス感染,薬剤アレルギーなどのさまざまな疾患を映しだす全身の鑑なのである。
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(株)構造機能科学研究所
代表取締役 鈴木 正夫