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※赤字の日はお休みさせていただきます。
治療から予防へ(セルフメディケーション)
9.免疫の不思議「妊娠」
「物と生物の違いは?」と問われたら、皆さんの応えは何でしょうか?
この問いかけは、私が有機化学の授業の冒頭で学生に投げかけてきた「自分で考える」への誘いです。
一つのことをいろいろな視点で捉えることは本質の追究に不可欠であり、個性の反映でもありますので、多様な回答があって然るべきと思っています。
…続きを読む…
「物と生物の違いは?」に対して私が第一に挙げるとしたら、「命(子孫)の再生産の機能を有するのが生物であり、単なる物にはそのような機能が無い」です。
「生物」という言葉は、「命を生む物質」と理解しています。
超分子科学の観点から捉えた生物とは、「分子の種類と数と集まり方(秩序)が調った集合体であり、自己組織化能を有する」となります。
生物が、命の守りとして具備した生体システムが「免疫」です。
免疫の端的な定義は、「生物が、自己と非自己を認識して、非自己を排除する生体システム」です。
今回は、命(子孫)の再生産「妊娠」について、免疫の観点からアプローチしてみたいと思います。
妊娠の第一歩が、女性が精子という非自己を体内に受け入れることに始まります。
妊娠は、免疫のブレイクスルーから始まっていることに、免疫の不思議に驚きを禁じ得ません。
免疫に関する研究の進歩に伴い、追究が困難であったヒトの妊娠と免疫についても多くの発表がなされるようになってきています。
その中の一つで、先の記事でで予告しました「胎児を拒絶しない免疫機構」を以下にご紹介いたします。
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【胎児を拒絶しない免疫機構】
Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130126
原文:Nature (2012-10-04) | doi: 10.1038/490047a | Tolerating pregnancy
Alexander G. Betz
<要旨>
妊娠した女性の免疫系が、胎児の持つ父親由来の抗原に対して寛容となる仕組みに、「抑制性」の免疫細胞がかかわっていることが実証された。
胎児抗原に特異的に反応して増殖するこの細胞は、出産後も一部が維持されていて、2回目以降の妊娠を助けていた。
<本文冒頭>
ヒトをはじめとする有胎盤哺乳類の免疫系にとって、「妊娠」は難題だったに違いない。お腹の中の子は、母体にとって、父親の遺伝子を持つ「異物」だからだ。
母体の免疫系は妊娠中、胎児が発現する父親由来の抗原に対して攻撃を抑制(寛容)しながら、病原体に対しては応答して母体と子を防御しなくてはならない。
今回、Jared Roweたちによって、妊娠期間中、母体内では、胎児が発現する父親由来の抗原を特異的に認識する「制御性T細胞」と呼ばれる免疫細胞が増殖し、この細胞によって母体の胎児に対する免疫応答が抑制されていることが実証された(Nature 2012年10月4日号102 ページ)。
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女性の寿命が男性よりなぜ長いのか?についての理由の一つとして、女性の免疫機能が男性より優れていることにあるような気がしています。
≪小西行郎先生ご逝去のお知らせ≫
日本赤ちゃん学会理事長・同志社大学赤ちゃん学研究センター長・小児科医の小西行郎先生が2019年9月5日にご逝去されました。
記事をご覧の皆様にも小西先生をご存知の方がおられることと思いますのでご案内申し上げます。
小西先生が東京女子医科大学教授から2008年10月同志社大学赤ちゃん学研究センター教授として赴任されて、初めてお会いする機会を得ました。
同志社大学赤ちゃん学研究センターは構造機能科学研究所の所在地と直ぐ近くにあり、その後、毎月セミナーを開催されていました。
私は、アレルギーの始まりが胎内感作の可能性があるのではないかと考えていましたので、赤ちゃんのことを学びたいと思い小西セミナーに参加させていただくようになりました。
セミナーは少人数で、セミナー終了後に時々懇親会を開いてくださいましたので、とても有意義で楽しいひとときを過ごさせていただいておりました。
セミナーが途切れていましたのでどうしたのかと思っておりましたところ、届いた赤ちゃん学会誌が小西行郎先生の追悼特集号でした。あまりにも急な旅立ちに残念の極みです。
(株)構造機能科学研究所
代表取締役 鈴木 正夫